二度と娘は手放さない

一人娘が居なくなって1ヶ月が過ぎた。
私、「まだ見付からないのか?」
妻、「うん」
私、「ちゃんと探しているのか?」
妻、「探してるわよ」
私、「本当は居場所を知っているんだろ?」
妻、「私のことまで疑うの?そんなんだから、娘が出て行っちゃたのよ」
私、「・・・ごめん・・・」
妻、「・・・私もごめんなさい・・・」
一人娘が居なくなると、家の中がどんよりする。
メッセージが届いてないか、スマホを何度も確認するのだが、娘からのメッセージは無い。
無事なのだろうか?お腹は空いてないだろうか?考えるのは娘のことばかり。
お風呂に浸かっても、娘が寒い思いをしていないか考えてしまうと罪悪感を抱いてしまう。
風呂を出て濡れた体をタオルで拭いていると
妻、「Aちゃん(娘のこと)から電話よ」
妻からスマホを受け取ると、聞こえて来たのは、「パパ、助けて」
私、「どうしたの?」
娘、「パパ、早く来て」
私、「何があったの?」
娘、「良いから早く来て」
泣き叫ぶ娘の声を聞いたら居ても立っても居られず、濡れた体のまま家を飛び出した。
娘が居たのは、家から徒歩3分のワンルームアパート。
娘、「パパ、ここよ」
娘のところへ走って行くと
娘、「パパ、どうにかして」
娘が出て来た部屋の中に入ると、水がジャージャー流れる音が聞こえた。
娘、「トイレの水が止まらないの」
私、「えっ!?」
娘、「パパ、止めて」
私、「はあ!?」
濡れた体のまま家を飛び出しため、トイレの水を止めるための工具は何も持ってない。
娘、「工具を持って来て」
私、「イヤだよ」
私が断ったのは、娘は男と同棲をしていたから。
娘、「業者さんを呼ぶから、お金を貸して」
私、「イヤだよ」
遅れてやって来た妻、「ママがお金を出してあげる」
私、「はあ!?そのお金、俺が稼いで来たんだぞ」
業者さんを呼ぶお金が無い娘は、一旦、家に帰って来ることになり、手切れ金として娘の男にお金を渡した。